Starlit@柿木畠, 金沢市
あちこち旅へ出かける。出かけた先には必ず、自分だけのお気に入りのバーがある。
今回は金沢だ。小山町の「穆念(BOKUNEN)」と片町の「倫敦屋酒場」は外せないが、ここにもう1軒、どうしても素通りできない店が加わった。柿木畠の「Starlit(スターリット)」。金沢の街を案内してくれた同行者の紹介で訪れた。世界中のラムが楽しめる店だという。

大きな窓からは星空が綺麗に見えるのだろうな

世界各国100種類以上のラム酒が揃えられている
ラムはもともと好きな酒だった。特にダークラムの、熟成を重ねて落ち着いた味わいがたまらなく好きだった。一番のお気に入りは〈ロン・サカパ・センテナリオ〉。グアテマラの高地、標高2,300メートルの冷涼な環境で6〜23年熟成された原酒をブレンドした、なめらかな甘みと深いコクが特徴のプレミアム・ダークラムだ。この説明だけで、いかにも大人の酒という佇まいがする。
そう、僕はラムを「大人の酒」だと思っていた。だからモヒートやラムトニックは滅多に口にしないし、ラムコークなど論外だ。そんな偏屈なこだわりを抱いていた。

「写真は慣れないので」とどこか照れくさそう
ところがカウンターにつき、同行者から「ここのモヒートは格別に美味い」と言われ、喉の渇きもあって素直に従ってみることにした。
多くのバーでありがちなことだが、香りを立てようとするあまり、ライムやミントを必要以上にマッシャーで潰してしまう店は少なくない。それでは香りよりも先に苦味が出てしまう。バーテンダーにとって、モヒートは簡単に見えて実はもっとも難しいカクテルなのだ。

モヒート
現れたのは、俳優の吉岡秀隆さんに似た、優しげな顔立ちのオーナーバーテンダーだった。最後に炭酸を注いで軽くステアし、客の前に供すまでの淀みのないスムーズな所作は、彼の物腰の優しさをそのまま表現しているようだった。
差し出されたライムとミントの香りが爽やかな一杯は、僕の予想を鮮やかに裏切る美味さだった。

左から「BOSO」(南房総)、「ARCABUZ(アーキバス)」(種子島)、
「RAIN MAKER(レインメーカー)」(愛媛)、「NAGURA(名蔵)」(石垣島)
「普段はどんなラムを飲まれているのですか?」
そう尋ねられ、ダークラムが多いと答えると、「それでは」とカウンターに何本かのボトルが並べられた。見ると、そこにはダークラムは1本もない。ホワイトラムが3本に、ゴールドラムが1本。さて、どれにするか……。もちろん、当たり前のようにすべてを飲んでみることにした。

空になったグラスが並ぶ……
北から南房総、愛媛、種子島、石垣島。産地は様々だ。味わいはそれぞれに個性的だが、どれも驚くほど滑らかで香りがいい。グラスを傾けると、訪れたこともないその土地の風景……、いや、降り注ぐ陽の光までもが目に浮かぶようだった。
これがいわゆるテロワール(土地の個性)というやつか。たしかに、大地の香りがする。国内でこれほどまでに美味いラムがつくられていたなんて。一歩一歩を踏みしめるように楽しむ。ラムと言えばダークラム、と思い込んでいた自分が急に恥ずかしくなった。

同行者が楽しんだ4本
この歳になって初めて、ラムという酒の本当の深みを知った気がする。
金沢にまた1軒、どうしても覗きたくなるバーが増えてしまった。
ちなみに「Starlit」とは、日本語に訳せば「星明かり」という意味になるだろうか。
穏やかで、静かな夜を過ごすにはうってつけの店だ。

アテはどれも絶品。自家製のドライフルーツ、中でもスイカの凝縮された甘みがラムに驚くほど寄り添う




Starlit
石川県金沢市柿木畠4-14 栗原ビル 4F
TEL : 076-209-5456
定休日 日曜日(月曜日が祝日の場合は営業)
https://www.instagram.com/starlit_kanazawa/
営業時間・予約・価格については直接問い合わせてください

