【鹿児島天文館】飲んで騒いでサンタルチア 「小さなワイン蔵」は今夜もにぎやか

カンティネッタ ヴルカーノ@天文館七味小路, 鹿児島市

カンティネッタ(Cantinetta)はイタリア語で「小さなワイン蔵」という意味だそうだ。ブルカーノ(Vulcano)は火山。「小さなワイン蔵のようなレストラン 火山」ということだ。もちろん火山は桜島のことだ。
はじめて入ったのは25年前だ。大阪から鹿児島に移動する飛行機の機内誌でこの店の紹介記事を読んだ。バーニャカウダとグラッパがおすすめだと。その頃鹿児島のイタリアンレストランでグラッパを飲めるところはそんなになかった。これは行ってみないとなと思い鹿児島に着いたその足で訪ねたのだ。

いつも元気で声のでかい渡瀬信也さん

可愛い店だった。店の前にはオリーブの鉢植えがあり、ファサードの大半を窓が占めていた。通りから覗くと赤白のギンガムチェックのクロスがかけられたテーブルが並んでいた。予約なしだったが平日だったこともあり運よく入れ、窓際の席があてがわれた。
それから25年の付き合いになる。多い時は毎週のように通ったこともある。

厨房で忙しく手を動かす恵子さん

ホールはオーナーソムリエ渡瀬信也さんが取り仕切る。シェフは奥様渡瀬恵子さんだ。
信也さんは言う。「うちはイタリヤ風居酒屋です。気軽に楽しんでもらえばありがたいです。居酒屋使い大歓迎です」と。だから私は居酒屋使いに徹する。
さらに、後で知ったことだが一応ドレスコードなるものがあるらしい。そんなこと知らないものだから、夏なら短パンTシャツビーサンで大きな顔をして出入りしていた。さすがに悪かったなと思い謝ると「お客様の個性を大切にするのもおもてなしのひとつですから」と信也さんは笑った。「あくまでも家庭料理の店ですからね。肩肘張らずにくつろいでもらいたいから」と。

ある日の2本

オーナー夫妻は東京、イタリアでそれぞれの腕を磨いてきた。ワインはピエモンテやトスカーナを中心にイタリア中の銘柄が100種類以上そろっているという。料理はコースはもちろん前菜・パスタ・リゾット・主菜・デザートまですべてアラカルトで、お腹一杯食べられる。メニューは毎日変わる。その日の仕入れにあわせて、ご主人が手書きのメニューをつくる。が、メニューにないものをねだっても、用意してくれたりする。目移りして決められないなら、すべてを委ねるのもいいかもしれない。ワインのことなんかほとんどわからない私はすべて身を委ねる。たとえばこんなふうに。「きんきんに冷えた白ワインでいちばん安いやつ」と。するとソムリエ氏は笑って応える。
「承知しました。清水さんの場合、何を飲むか、じゃなくて、何本飲むかが問題ですもんねえ」と。で、必ず2本、多いときには3本飲あけてしまうことになる。

またある日の2本

ついでに言っておくと、ここのグラッパはいい。ワインを散々飲んだ後にグラッパをゆっくり飲る。これで完結という感じだ。つまり開店から閉店までしっかり腰を据えて飲んでしまうのだ。その上、隣あわせた客と盛り上がったりするから楽しいしおもしろい。まさにイタリア風居酒屋の面目躍如だ。 
だけどクリスマス・イブとバレンタインデーだけは「来ないでね」と言われる。さすがにその日はアベックばかりで、「満員なのに、めちゃ静かで。清水さんの雰囲気にあわないから」だそうだ。

ウニの冷製カッペリーニ。これは人気の一品だ

私の場合は、散々飲んだのに閉店後まで居座って、オーナー夫婦と飲む。これがまた楽しい…。あんまりだから、料理のことにも触れる。私のお気に入りは、トリッパ(牛胃)と豆のトマト煮、完熟トマトの冷製カッペリーニ・バルサミコ風味、自家製イカスミを練り込んだタリオリーニ・アサリとイカのソース、それにキャベツとアンチョビのスパゲッティなどだ。が、その日その日で仕入れた新鮮な魚介類や地元鹿児島、南九州産の牛、豚など行ってみてはじめて出会えるメニューもある。

宮崎牛ローストビーフ

やや1点難がある。ソムリエ氏がおしゃべり好きでその上声がデカいということだ。まるで自分が主役のようにしゃべり笑う。静にしみじみ食事を楽しむのはちょっと難しいかも。
「だってうちの売りは家庭料理と家庭的な雰囲気ですからね」
ソムリエ氏はそう言って笑う。
いずれにしても、料理もワインも本物。でも肩肘張らずに、楽しめる。飲んで騒いでサンタルチア、オソーレミヨ…てな感じで、今夜も酔っぱらいだぁ。

岩ガキ

球磨川産アユ

エスカルゴ

オリーブの鉢植えは大きく育っている

カンティネッタ ヴルカーノ
鹿児島市東千石町5-27
099−227−4543
コースやお料理、お値段、営業時間などは直接お問い合わせください

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